可愛らしさの欠片もない
縁、か。彼女は現在独身だ。世間一般的には結婚していて子供が居てもおかしくない。何故独身なのか、そこのところを聞いてみたことはない。私が知らないだけで、結婚経験者かも知れないし。簡単には踏み込めない領域だ。
「そういうことよ」
「あ、はい。あ、いえ」
聞いてるのかどうなのか、そう思わせてしまうような返事になってしまった。
「ええ?な~に?まあね…私みたいに何もできなくて、……忘れられなくて…なんてことになると、こうなっちゃうから。厄介よ?今じゃなくてもね、もしかしたらもっと先で縁が出来るかもしれないってね、何となく思っちゃってて…」
あ…そんなことが…。居るんだそんな人が。思いがけず、一人でいる理由を知ってしまった。
「幸せを願ってるなんて所詮綺麗事。……心のどこかでは別れて独身になってくれないかなって思ってる部分もあるのよ。ちょっと恐い女でしよ?フフ。それはまだ、この中途半端な年齢だから、希望を持ってしまうのね…。あ、ごめ~ん、つい、咲来さんの話につられて聞かせちゃった。絶対オフレコよ?お願いね」
「はい、勿論です」
私しか知らない話。噂になったら発信源は私だってことになる。
「じゃあ…、お先に」
話しながらも着替えを進めていた先輩は、最終確認で瞼をパチパチさせるとポーチを持って先に更衣室を出た。
……ちょっと、女の情念?表には見えない恐い部分を見てしまったようだ。決して不幸を願ってる訳ではないだろうけど、もしもがあるかもって。期待してしまうんだ。気持ちは相手に知られていたんだろうか。それとも思ってるだけで…相手は全く気づいてないのだろうか。
不完全燃焼はあとを引くってことかな…。引くよね暫くは。…忘れられない人、か。
私は先輩の年齢になったとき、どうしてるだろうか。