可愛らしさの欠片もない

問題が一段落した、とも言い難い状況になった。これから、一日一日と先輩のお腹の中で赤ちゃんは育っていく。
どうするのだろうか。仕事、続けるのだろうか。どうやって?お腹が目立って来たら、噂どころではなく、現実として言い訳は出来なくなると思う。
きっとそのことで、私なんかに相談はないと思う。助けてね、と言われたけど、多分、そんなことにならないと思う。
私は私のことで一杯一杯だと、嘘も隠しもなく、そんな状態なのだから。

【今夜もまだ仕事ですか?】

取りようによっては嫌味に取られるかもしれない。そして、これもまた、沢山、聞かされた言葉かもしれない。
裏に隠れた言葉や思いがある、と、想像することも。嫌というほど感じてきた言葉だと思う。

【そうだ】

だとしても、こうして返ってくる。
煩わしくても…最初だから努力、なのかもしれないけど。
今、忙しい仕事ってなんだろう…考えても解らないのに……。
駄目元で聞いてみたいことがある。

【最近、先輩に会いましたか?】

それは、言葉にそれほど意味はなかった。知りたかったのは、先輩の妊娠に関して何か知ってはいないか、そこだった。会っていなくても、連絡があったとか、その程度のこと。
最近まで連絡は取っていなかったとしても、私のことで連絡を取った。友人だ。一度連絡を取ったら、次…連絡はしやすくなる、と思う。
何があった、何をした、と、全てを教え合うことはしないだろう。隠している、とはニュアンスがちょっと違うとして。…私に…話さなくてもいいと判断すること。そんな程度のことを話してないだろうかと思った。

会ってない、とも、会った、とも …。何も返って来なかった。
これはどういう意味なのか。
私のように一人でぐるぐる考えを巡らす人間にとって一番の不幸だ。返事はできない、まずいから。…会っていた、と肯定したと、そう思ってしまうからだ。
それだって、何が悪いわけがある訳じゃない。だって友人なんだから。急に連絡を取ったら話したくなったって、なるかもしれない。
…なんて質問をしてしまったんだろう。これでは、何故メールの返信がなかったのかを問い詰めたくなってしまう。
尊敬する先輩だと、片方で思いながら、片方では甲斐さんとの関係にやきもちを妬き続けてる。……とても面倒臭い感情を宿してしまってる。
まさか……なんて、とんでもない発想が頭から離れなくなった。今まで以上に心が燻りだしてしまった。
それは最初から巧妙に作られた、私を巻き込んだ話。そんな、まさかなストーリー。
あるわけない。なのに私は、そんな、根拠も証拠もない考えだけで甲斐さんにメールした。

【やはり、なしにしたいです】

と。
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