可愛らしさの欠片もない

「いいお店、見つけたよ?」

「え?」

「ほら、あの店以外に、いい店があったらって、前に言ってただろ」

「あ、そうでしたね。それで?それはどんなお店?」

「ハハ、それがね、笑っちゃうんだけど」

「はい?」

「姉妹店だった」

「え?本当に?ではそこも創作料理?」

「あー、それが正真正銘の“姉妹”店。あの創作料理の店の経営者の妹さんが経営してるんだ」

「本当に?嘘みたい」

「そう。世間は狭い、嘘みたいな話は本当にある、珍しくないってことだ」

「そうですね…」

……なんだか…思わず考えてしまう。

「ん?で、あ、ここだよ?あの店とは反対側のエリアだから、帰りはちょっとその分遅くなるけど」

「なるほど、こっちは…帰ることを考えるとあまり来ないエリアですね」

駅が遠くなる。

「どう?入ってみる?」

「はい、これ以上は詳しく聞かず、入ってみます。それも楽しみの一つとして」

「ハハ。よし、じゃあ、入ろう」

大島さんと二人で新しいお店に来た。先輩は私に遠慮せず行ってと言ってくれた。今、つわりがきつくて辛いからって。

「……あ」

「どう?」

「まさか、こんなミックスだとは思いませんでした」

近くにあったメニューを手に取った。
鶏肉、豆腐、玄米…、高蛋白でカロリーの低い物を材料に作るお店。そしてデザートも。
低糖質の物もあり、普通の物もあった。やっぱりここもメニューは豊富だった。

「あったらいいなって、そんなお店…ですね」

メニューを吟味すれば、“罪悪感”なく、食べられそうだ。

「じゃあ、しばらくはここにしようか、いい?」

「はい」

「いらっしゃいませ、お好きなお席にどうぞ。姉から連絡はもらってます。開店間もない店ですが、ご贔屓に、お願いします」

「あ、はい、よろしくお願いします」


「あ、早速ですけど、聞いてほしいことがあって…」

「あ、そうだったね。じゃあ……トイレとは反対側の奥にしようか」

人が頻繁に行き来しないってことだ。

「はい、ではあっちに」

今夜のご飯は、私の相談がメインだ。
私は、甲斐さんとのこと、先輩との関係性、それと、私が作り上げてしまった物語を聞いてもらうつもりでいた。自分の中では持ちきれなくなった。誰かに聞いてほしくなったからだ。
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