可愛らしさの欠片もない
もう、誰の気持ちが誰にあるかなんか、そんなこと、配慮する気もなくなっていた。
「離婚は本当なのか、そんな話をしていたじゃないですか」
「ああ、そうだったね。それが?嘘だったの?」
首を振った。
「そういう具体的な話ではなく、私の…そういうことからの、想像に過ぎない話なんです。でも、それを考え始めると、ないことじゃない、ありそうな気がして、それで相手の人に、一方的に、やっぱりなしにしたいって、言ったんです」
「え、ちょっと…どうしてそんなこと言ったの、想像で何を…直接言ったの?」
馬鹿なことを言ってると思っただろう。
「いえ、メールで」
「それで?相手の人は?承諾したの?」
「なにも。連絡が来なくなりました」
「…それって…」
「それでいいってことでしょうか。私、その前にちょっと……疑ってるような、信じてないとも取れるようなことを言ってしまったから…」
思えばずっと…考えては悩んで、そんなことばっかりを言ってる。疑われて、挙げ句、想像を元になしにしようなんて…言われる方は…。呆れてる…呆れてるってことだ。
「じゃあ、怒ってるだけかもしれないね、疑われる、信じてない、って、根本的に駄目じゃん」
振り回してばかりってことです。しんどい思いばかり…させてる…。
「ん゙ー、それでも大人だから、言うべきことは言って来そうなものなのでは…」
「大人でも、…腹が立つし、拗ねる。直ぐ何かを返したら言い過ぎてしまうと思ったらしない。そこは冷静に大人対応できるよ。多分、そんな人なんじゃないの?」
あぁ…だからメールが来なくなったのかも。
「納得のできる話をするため、自分を落ち着かせてるのかもしれない」
「私の知らない部分、その方が多いっていうのもあって、その上、学生の頃の…友人だという女性のこともあって。その女性は今でも私とつき合っている人のことを好きらしくて、それも知らない人ではなくて私の知っている人だったし」
こんな言い方をしたら誰のことを言ってるのか解ってしまうかもだ…。
「知らない頃のことにやきもちを妬きたくなるのはしようがない、解らないから。でもそれも限度があるかな。それをずっと拘られても、それはそれで困るかな。多少なら、あ、可愛いなって思うけど。事あるごととなると、ちょっと煩わしい、かな。いい加減、もういいだろって。あ、いや、気持ちは解るけどね…」
「そうですよね…」
「好きなんだね…」
「あ、はい、…まあ、そうですね」
「それで?なしにしようって?その程度で?」
「いいえ、…これから話すことが、私の想像で作り上げた話なんですが…」
「う、ん」
「結婚してる、離婚はしようとしてる。それはそうだとします。それで、ある日を境に、私に存在を知らせるような行動をし始める。私に印象付けるために。それが電車での出会い。そして私はまんまと一目惚れしてしまう。告白してしまう。そして、受け入れる」