可愛らしさの欠片もない
「…難しいよね。相手も大事にしたいけど自分も大事に思いたいし。犠牲、なんて感覚になるともう無理だと思う。本当、こういうことって人によって感覚が全然違うと思うから、解らないよね。だから相手のこと、よく理解しないとって、ね」
「んー」
「相談ていうより、俺が俺の感覚で語ったことだし、相談する相手によっては言うことだって違う。男性に聞くのと女性に聞くのでも違うと思うし。ただ、言えることは、想像で勝手に話を決めてしまわないってことだよ。例えそれが結果その通りだったとしても、基本は一人で決めることじゃないよ。事実かどうか相手に確認してからじゃないと解らないからね。…後悔、したくないでしょ?」
それをすると、…聞いただけで、もう駄目な気がする。これを考えてしまうから、どうしたらいいか解らなくなって……ぐるぐるする。
「鶏肉のソテー、豆腐サラダです」
「あ、いつ?」
「適当に頼んでおいた。忘れると思って」
「あ、本当に…私、話すことに頭がいってて、わぁってなってたから」
「デザートは何か決めて頼んで?」
「はい、有り難うございます」
このタイミング、いいタイミング。
話も丁度終わったし。
「このお店、先輩とも来たいですね」
「久田さん、体調があまり良くないんだって?」
「そうですね。…女子は色々とあるので」
「うん、詳しくは、特にはね。聞かないけど」
なんとなくの感じで濁しておくしか今は出来ない。大島さんに打ち明けるかどうかは私では解らないことだから。気づかれるようなことにならないようにするしか…私に出来ることはそのくらいだ。
「仕事には出てきてますから、大丈夫だと思います」
「うん、まあ、体調不良って、侮れないからね」
そう考えてしまいますよね、体調不良って何かが隠れてるんじゃないかと心配になりますから。
それから何だか静かにご飯を済ませてお店を出たところで別れた。
帰る方向が同じでも、駅までとか、家までとか、一緒に行動するっていうのも……そんな思いがお互いに働いたような気がした。
時間を潰してまで会わないようにしようとは思わなかったけど、真っ直ぐ駅には向かわなかった。