可愛らしさの欠片もない

…ん゙ん……あ、れ……いつ帰ってきたんだろう…。
ベッド、だ。……部屋だ、…家だ。…ぁ…大島さんは?大島さん、どうしたんだろう……え?
……歩いて帰って来たような記憶はない…。でもちゃんと部屋で寝てる…。えー?!
あ、テーブルの上に袋があった。

のそのそとベッドから下りて正座した。
覗き込んで見た。…やっぱり。明石焼き。私が頼んだ物に違いない。すっかりしぼんでるけど。
横で携帯が光っていた。メールだ。

【部屋の住所も教えてくれて鍵も出してくれたので入って寝かせました。今日は有り難う。思いがけず話が出来たこと、食事も出来たこと、楽しかったです。『これからもよろしくお願いします』 児島、もとい大島】

大島さん…。私、いつ、教えたんだろう。鍵は…リールを引けばその先についてる…。
んー、とにかくご迷惑をかけました。酔った、というより、少しのアルコールのおかげで寝てしまったんだ。いつもだけど少量のアルコールで睡魔がくる。そして一時間くらい爆睡して目が覚めるんだ。
はぁ、迷惑かけたんだ、部屋まで送ってもらったりして…一緒にご飯もしたから、これからは会社でも感じが違ってくるだろうな…。

【あの人がそうなんだね。確かに惹かれるという気持ち、解ったよ】

え?な、に、あの人。あの人って……?。え゙?えっ!会ったの?…嘘…私が教えないと解らないはずだ…。では、どこかで会ったの?……ええ?どこで?どんなシチュエーションがあったの?……覚えがないんですけど…。これは…大島さんに聞いてみないと…。ええ?!会ってたら、どうなの?…う~ん?
今、何時?…はぁ、夜中だ…。随分、いつもより寝てしまったんだ…。

【目が覚めました。大変ご迷惑をおかけ致しましたようですみませんでした。色々とお聞きしたいこともありますが、また改めます】

メールだから送っておこう。

はぁ…それにしても…だ。
一気に距離が近くなってしまった感じ。なんだか解らないけど、波長が合うとでもいうのかな。特に身構えるような窮屈さも感じなかったから。きっと大島さんの方が大人だからだ。
やっぱり、離婚の話だよね。あの話を聞いてしまったからだ。だから妙に親しく…あぁ……喉乾いた…んん。
冷蔵庫を覗き、作り置きしてある麦茶を飲んだ。本当、ゴクゴク飲めるって嘘じゃない。冷たくてほんのり香ばしくて喉ごしがいい。…はぁ。美味しい…。
せっかくの明石焼き…、ふっくらしてただろうに…冷めてしぼんでしまった。
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