可愛らしさの欠片もない
「…私は一体なにを話したらいいんだろうって、話題を探していました。でも、今はそれはしなくていいかなって思い始めています。だってそれは、話題がないのは仕方のないことだからです。二人で経験したことも何もない、共通の話題になるものが何かなんて全く解らないんですから。
珈琲、頂きます」
好きな物や趣味を体裁で聞かれても…。あーそうですかで終わり、それ以上膨らみはしない。…表面だけ繕っても…愛想笑いをして終わりだ。好感どころか、冷めさせてしまうかもしれない。
丁度、飲み頃になっていた。珈琲を飲み始めると本当に静かになった。
私は無理して話すことを止めてみた。無言なら無言で時間が過ぎてもいい。本当の意味で興味があって聞きたいことがまだないからだ。
職業を聞く?そんなのよくあること。つまらないでしょ?別にそこに大した興味もない。では年収?何かしら仕事をして生活が成り立っているのなら、飛び抜けた高所得である必要はない。
「……フ、ハハ。…いいね、…やはり面白い人だ」
「え?」
「さっきは楽しい人のようだ、と言ったけど、間違いなかった。あなたは面白い人だ。とても興味が湧きました。…あなたのことをもっと知りたい。本気でそう思いました。だから、私にも今以上にもっと興味を持ってほしい。
……私はこの近くが勤務先です。住まいは、あの駅から三つ手前が最寄り駅です。それから、これ、私には現在、妻がいます。…これ」
…………え?…今なんて?…さらりと言った言葉の中に、確か妻がいるって…。え?