可愛らしさの欠片もない
お勧めだよと、言われるがままオムライスを注文した。なのに、この人は違うもの。カツサンドを注文した。…二人で同じ物を食べるのを避けたのだろうか。……知らない。
何も話さず、淡々と口に運んだ。こんな状況だけど、オムライスはとても美味しかった。玉子の感じもチキンライスのケチャップの酸味も凄く食欲を誘った。温野菜のサラダもクラムチャウダーも完食した。メニューにあったナポリタンもケチャップの味を想像すると食べてみたいと思っていた。…また来ればいいか。お店は何の関係もないから。来ては駄目だという権利、この人にはないだろうし。
頃合いを見計らって食後の珈琲が運ばれて来た。ブレンドだ。
しかし、本当に静かだ。休日だというのにこんなに……貸しきり状態で大丈夫なんだろうか。私が心配することではない、それこそ大きなお世話だけど…そうか、豆が売れてるから成り立ってるのかも。
「さて、と。では、話をしようか」
あ、そうだった。気は進まない。
「…はい。あ、その前に」
「はい?」
「あなたのことは、なんとお呼びしたらいいですか?名前は伺いましたけど」
「なんでもいいよ?」
そう、何でもいい。今は拘るところではない。どうでもいいのはどうでもいいけど。
「では、甲斐さん」
別に聞くことでもなかった…呼ばなくても話は出来る。最初の気持ち…これからなんて呼ぼうかなって思ってたから、…だからだ。
「駿脩でもいいよ」
…そんな…。わざわざ言い直すなんて…希望は下の名前なんでしょうか?、それだって今は…甘い語らいをするわけではない。
「甲斐さんで」
聞かなくてもこれで良かったこと。
「あ、名前…なに?」
だから、……書こうとしたのに。
携帯を取り出した。さっきのメモを出した。