可愛らしさの欠片もない
「いいお店ね、ね、私も次から利用していい?…丁度いい賑やかさだし、個室もあるし…予約、入れておけば大丈夫よね」
個室?利用するのは自分達とは一緒じゃないときにってことだ。
「そんなこと、許可なんていらない、使うのは自由ですよ」
「そうですよ、お店なんだから、私も、ぁ、私も凄く好きです、お料理、メニューも多そうだし」
…ふぅ。まさか、あのときのお店に来るとは思わなかった。これは、先輩にバレるのも時間の問題かもしれない。店員さんが何か言って来たらもう誤魔化しようがない。
「あ、これ、ハマチのカマの煮付け、これ美味しそう。日本酒…辛口で何かあるかしら。絶対、飲むわよ」
フフフ、本当、美味しいものに合わせてお酒が飲めるなんて羨ましい…。煮付けを口にホロッと入れ…堪能して、お酒をきゅっと。いいな、全くのイメージだけだけど、それでも美味しそうだ。私はやっぱりごはんがいいけど。
「ごめん、後は適当に注文してて。私、お手洗いに行ってくるから」
「はい、解りました」
先輩は、あ、あとこれもね、とメニューを指して行った。
「あの、大島さん…」
「あ、大丈夫だよ、別に疚しいことはないんだけど、ここに二人で来てたことはオフレコにしてもらってるから。その方がいいよね。大丈夫。心配ない。客商売だからね、そういう頼み、出来ないようじゃ成り立たないでしょ?」
あー、同じようなこと考えてたのかな。
「あ、はぁ、有り難うございます。でも、特に知られたら困るって思ってるほどではないですからね」
「うん、別に疚しくないしね」
「はい」
全くその通りです。何もないんだから。疚しくなんかない。
「…変なもんだね」
「何がですか?」