可愛らしさの欠片もない
「ながたみき、知ってる。それがどうかしたのか」
…それが。ですか。もっとつけ足して、先に言ってくれませんか。知ってますか、に対する答えだから、知ってるなら知ってるってことでいいんだけど。
「…私の職場の先輩です。今夜はその人と一緒にご飯を食べてました」
「そうか、そうだったのか、へぇ、世間は狭いな」
顔が少し緩んだ…知ってるって、どの程度ですか?
「ん?」
「……どういう知り合いですか?」
「あいつはなんて?実妃に聞かなかったのか?あぁ、聞いてないから俺に確かめたのか」
そうです。でも何だかこの話され方が嫌です。疎外感があります。どうして…あいつはって、そっちを優先するんですか、自分の方からの関係性を言ってくれたらいいじゃないですか。
「…はい」
甲斐さんとのことは名前を言ってないですから。…あいつ………実妃……呼び捨て…甲斐さんだって名前呼びだ。随分親しい。
「…さあ、どんな関係だと思う?」
…関係?どんな知り合いかって聞いたのに…。疑問形で返してきて…、含みを持たせた、今はしてほしくない返され方。それを聞いた私の様子…。明らかに気持ちを探られてる気がする。
「解らないから聞いてるんです」
刺々しくなった。
「実妃は友人だ」
友人、それだけ?……簡潔。男の人は聞かれたくないことは詳しく話したがらないっていう。それ以上聞かれたくないからだ。
「いつの友人ですか?」
質問が口をついて出る。友人とはどんな?
「大学の、学生の頃のだ」
「同い年ですか?」
「そうだ。実妃の歳、知らないのか。あぁ、まあ、37ってなると言い辛くなるか。同じ職場ならとっくに知ってないか?」
…知らないのかとか、聞いてないのかとか、…職場の人の年齢は別に、気にしないし。…なに?知ってないと駄目なの?
甲斐さんと先輩が“友人”って知ったのは今ですから。…沸々してる自分がよく解る。
「それから?もう、いいのか?」
「はい。あ、はい」
「なに?」
「………ずっと友人でしたか?」
友人友人って…。友人の部分にしつこく拘ってしまいたくなる。
「そうだ」
…簡単に言わないで。
「…嘘」
「ん?嘘じゃない」
「もういいです。有り難うございました」
…こんな…本当に嫌な受け答えだ。