可愛らしさの欠片もない
「…はぁ。それで?やっぱり、帰れって?」
「…はい」
「ふぅ。解りました。おやすみ」
…。
「………て、帰るわけないだろ。何を誤解してる。実妃のことは嘘は言ってない、友人だ」
「……でも実妃さんは…あっ」
これは言っては駄目なことだ。……どうしよう。
「あ、実妃さんとは今でも連絡を取ったりしてますか?」
いい加減にしろって言われそう。
「……はぁ、してないよ、全然。…結婚してからは一切、取ってない」
苛つかせてるのは間違いない。
じゃあ、益々、実妃さんの心に居続けている人は甲斐さんのような気がする。甲斐さんの名前を見たときの先輩の顔。あんな顔は見たことがなかった。懐かしい、もあっただろうけど、より、驚き。そりゃあ、私の携帯に甲斐さんの名前だから、驚いたといえば単純に驚いただろうけど…。その驚きはやっぱり違うものだと思う。もう、私と甲斐さんのことは読まれてる気がする。下の名前だけで平仮名で登録しておけば良かっただろうか。それでも、としのぶってって、反応しただろう。
「心配しなくていい。実妃の気持ちなら知ってる」
「え?」
……気持ちって。知ってるって。
「その上で現状なんだから。何も心配ないだろ?」
現状とは?実妃さんとどんな現状?それは私には真相は解らない。
心配ないって、本当かどうか解らない離婚中?私とこうなってるじゃないかってこと?
「……私、どうしたら…。今夜、逃げるように帰って来たんです。甲斐さんから来たメール、着信した瞬間に丁度近くに居て。それで、フルネームで登録してたから。それを見られてしまって。甲斐駿脩、って呟かれて…。先輩、実妃さんから前にオフレコよって聞かされてた話があって。…諦めきれない人が居るって。
それが、その相手が甲斐さんだって解った私はどうしたらいいんですか?
会社に行ったら、明日、会うんです。あなたをずっと思い続けている人のこと、私は…緩んだ顔をしてその人とは知らず話していたんです」
「友人なんだ。それはどうにもならないだろ?」
「……え」