可愛らしさの欠片もない
気が重い。足も進まない。会社に向かいながら、逆に遠くなればいいのにと思った。永遠、つかなければいいとさえ。仕事を休まなかっただけでも自分を褒めたい。
あ……こんなものだ…。
駅を出てすぐのところを歩いていたら出くわした。顔を会わせたくない人…。そう思ってるから会ったのかもしれない。
「おはよう」
普通なんだ…。凄いな。
「ぁ…おはよう、ございます…」
会社につくまでに会うなんて。全く心構えが出来てなかった。いつもの挨拶、それ以外、言葉が出てこなかった。私から先に言い出さないと駄目なのに。
「ん?鈍よりしてるわよ?いいことなかったの?」
……え?それは、どういう意味で聞かれてるんだろう。気まずいのは解ってるのに。これもいつもみたいな挨拶…?違う………嫌み?……さぞや揉めたでしょって……はぁ…。もう荒みきってる…。
「あの、私…」
昨日は…すみませんでした。って早く言わなくちゃ。
「…私を甘く見ないでほしいわ」
え、あ、どこかで聞いた言葉。そうだ甲斐さんだ。甲斐さんの言葉と同じ…。何、この人達…。似た者同士?…はぁ。
「勝手に遠慮なんかされても困るの」
「え、あの…」
遠慮?甲斐さんのことだろうけど、そんな話…、それどころか、何も話した覚えはない。
「そんなことされたら、余計、惨めになっちゃうでしょ」
惨めって…。そんな…。
「ぁ…そんな、…私は」
…似てる。この人達は話すことがまるで同じ。…性格が似てるってこと?それに…何を話すかも解ってる。……流石だ、お互いをよく知ってる。馬があって楽しかったでしょうね…。
「何が違うの?私の思いは所詮叶わない思いだって解ってるでしょ?昔、きっぱりフラれてるの。諦めたけど…諦められなくて、思ってても通じないものは通じないの。そのくらい解らない私じゃないわ。それでも思っていたいの。だから思ってるの。それは自由でしょ?凄く近くで長く居た、それは…思いも残るのよ、ごらんの通り次に行けてないでしょ?」
だから今もまだ一人だってことだ。
「ちょっとだけ負け惜しみを言わせてもらうと、性格はよく知ってるから。少なくとも、今のあなたよりは知ってる。そう言われるとあなたはどうしようもないでしょ?でもそれは仕方のないこと。つき合いが長かっただけよ。その結果よ。友人として長かった、だからよ。
駿脩は情けで女性を好きになったりしないから…そんな男じゃない。友人は友人。女だろうと、それ以上はないの」
本当によく知ってる…甲斐さんが何を言うかって…。
同情で好きにはならないって言ってた。