可愛らしさの欠片もない
「どうしてだ、こっちはいいって言ってるだろ」
「解りました、私が気が利かなくてすみませんでした」
この言い方は駄目だろうって思った。解決もせず、ただ反射的に謝っただけだ。謝ってもいない、言葉を言っただけだ。直ぐこんな、その場を収めるためだけの言い方をしてしまう。
来るまでに時間はあった。その間に出来ていたことだ。それは……するしないに限らず済ませておけることだ。
何もすることがないって、ぼんやり待っていたのが最大のミスだ。恋してるときの感覚…疎くなってるとか……そんなのあり得ない…。
…。
「別に……それだけに来てる訳じゃない」
あ…もう、最低、毎回毎回、問題ばっかり。
このまま、黙って座って時間を過ごすの?
「あ」
……要らないって言われそうだから黙って出そう。立ち上がった。
「どこに行く」
慌てたように腕を掴まれた。どこにも行かないですって。機嫌を悪くして飛び出すとでも思われたかな。
「キ、キッチンです。忘れてました、お茶、入れて来ます」
「はぁ…要らない…」
ほら。そう言うと思ったんです。それは今はどうでもいいって。
「私が飲みたいんです」
…解ってます。今、お茶をどうこうは関係ないって。解ってます。解ってますよ。
手を離された。
「…そうか」
「…どうぞ」
氷をたっぷり入れて紅茶を入れた。ミルクでもない、レモンでもない。ストレートだ。
「…うん」
…。
「あっ」
「…なんだ…」
…なんだって…そんな。大事なことをそっちのけにして、さっきから何をしてるんだって、思ってるんでしょ?今度はどんな違うことをするつもりだって。
だから、間違えたんです。きっとさっきの、あ、で、立ち上がったとき、行き先を間違えた。元々お茶はどうでも良かったんだけど。…だから、ずっと…この渋い顔のままなんだ。……時間は戻せないのよ。
紅茶に口を付けて少し飲んだ。また少し飲んだ。ごくっと喉が鳴った。……勇気がいる。
グラスを置いてテーブルを廻った。
甲斐さんの膝に座った。
「…ごめんなさい」