可愛らしさの欠片もない

「……仕事は、土日は休みなんですか?」

嫌かな聞かれると。それを聞いてどうする、とか思われそう。当たり前に聞いて、休みじゃない場合もある。トクトクと心臓の音がする。

「そうだけど、そうじゃないこともある」

背中にあった腕が動いた。
交代制ってことかな。では、平日が休みになることがあるのかな…。甲斐さんのような人なら、端的に言いそうなのに、何だか曖昧な表現…。聞かれたくないのかな。明確に教えたくないとか?
頭に手が触れた。

「そっちは休みは決まってるんだろ?どこか行きたいのか?」

あ、そういう聞き方をされると、特に計画して確認した訳じゃないから…。知りたいことの基本中の基本、それが知りたかっただけ。だから今は。

「…特には、ないです」

甲斐さんの指が、私の髪を少し摘まんで放しているのが解った。二人で出かけるのは無理な気もする。

「…そうなのか。旅行にでも行くか?」

背中に指が当たった。軽いタッチで上下を繰り返した。

「……あ゙、あ、はい。…行きたければ言います。…ちゃんと…言います」

…くすぐったい…ざわざわする。……旅行か…。全然、思ってもみなかった。………不倫旅行?…ハハ…。何だか…先がないみたいで嫌な表現。…普通の旅行よ、普通の。でも、今は無理だろう。
旅行じゃなくても、したいことを遠慮して言わないでいると思わせてはいけない。

「フ、そうか」

はぁ……仕事は何してるんだろう。…普通?…普通て…。
スーツを着てする仕事だとは思うけど。詳しい業種とか……知らなくても今はまだいいか。内緒にしたいとか教える気がない訳じゃないと思う。カフェで名刺を探していたようだから。
あ、でも、名刺とは限らないか。手帳だったかもしれない。そのページを切り取るつもりで探していたのかもしれないんだ。年齢からして少し偉い人、偉い人?役職についているかもしれない。

「…優李」

ん。脇を掴まれ少し体を離された。私は胸に手をついて甲斐さんを見た。

「あ、はい?」
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