可愛らしさの欠片もない
「ご両親は健在か?」
え?私のこと、聞いてくれるんだ。
「はい、田舎に居ます」
横に寝直した。同時に頭の下に腕を差し込まれた。また抱き寄せられた。
「そうか」
ん…この、そうかっていう言葉、曲者。
そうか、じゃあ◯◯だな、みたいな何かをいつも隠されてるような気がする。今だって、親のことを聞いた理由は?ただ聞いただけ…?
私が同じことを聞き返してもいいの?
自分のことになったら詮索されてるみたいに煩わしく思うんじゃないの?
37歳のご両親はまだ健在な年齢よね…。
田舎はどこだ、とか、それは聞かないの?健在ならそれでいいってこと?
「優李」
「はい」
「なんで、俺なんだ」
胸からの声が耳に響いた。
「えっ。…あ…」
なんでって、言われたら。あのとき感じたままに言えば。…ドキドキしてきた。
薄い掛け布団の中で脚が絡んでいた。
「電車の中って、それも通勤時間帯だと特に個性を感じないんです。ボーッと乗ってるだけっていうのもあります。正確には特にその景色に興味も持ってなかったというか。大体、同じ系統の色のスーツの人ばかりで。大半がそういう男性です。気にかけたことなんてなかったんです。毎日のことだし、押されて俯いて、…臭いに不快になったり」
着てるものは似ていても中身はそれぞれ個性は違うのだけど。
「う、ん」
「軽いって思われるかもしれませんが、にわかファンに近い感覚でした。あの日、あのタイミング…甲斐さんだけが違って見えたんです。スーツの色が目立っていたとかでもないです。みんなと同じような色でしたから。それでも目がいった。それは、まあ…、他の人とは顔が違っていたっていうのが正解かもしれませんけど。私の好きな顔だと思ったのは確かです。だから、一目惚れと言ってしまえばそれまでです。簡単な話です」
「顔なのか」
「あ゙……そう言われると…はい。でも、外から性格は見えませんから、最初はどうしても顔とか、雰囲気とか、そこからになります。性格はだから次の段階ですよ」
人に親切にしているところを見かけて惹かれたとか、そういう場面に出くわしてのことならそれだと言える。ざっくり言ってしまえば、ただ立っているところを見ただけなんだから。容姿以外の何物でもない。じゃないと、流すように見ていた視線が止まる訳がない。
「ハハ、じゃあ、今がその段階だな」
「あ、はい」
「で、どうだ?」
「どうだって言われても、まだつかめないです。難解なのは確かです」
「嫌な奴だと思うか?」
「それは、そう聞かれてしまうと…今はまだ、甘く採点しそうだから。正確には解りません。でも、そうではないと思います。私だってつき合い始めにしては、割と平気で遠慮なく言ってます。それは上手く喧嘩できるように引き出されてるのかもしれませんが」
売り言葉に買い言葉のような反論だけど、言いたいことを言えてるということではいいと思う。答えとずれちゃったかな。
「ふ~ん」
私のことは?どうなんだろう。いわば、今はお試し期間のようなもの。つき合いはお試しでと、言った記憶もある。今はどんな風に判断してるんだろう。