旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「萌奈ちゃん! どうしたの? ボロボロじゃない」
頭には保冷剤を巻きつけた包帯、頬には湿布の私はたしかにボロボロだ。中のひとから見たら、完全にホラーだっただろう。
お店から出てきた原田さんは私を起こし、店内まで引っ張っていってくれた。
「お腹が空きました……」
私は原田さんの席のテーブルに突っ伏した。怪訝そうな顔で近づいた店員さんに、原田さんが同じものを注文する。
「いただきますっ」
料理の到着と同時に顔を上げた私は、勢いよくサラダの器にフォークを突き刺した。
「いったいどうしたの。何があったの」
原田さんも戸惑った顔で食事を始めた。きっと仕事のあとでのんびり食事をしようと思って寄ったのだろう。
彼女の傍らには、読みかけの文庫本が。癒しの時間を邪魔してしまった罪悪感を覚えた。
「ごめんなさい」
胃に食べ物が入って落ち着いた私は、まず謝った。
「謝らなくていいよ。話したくないなら、話さなくてもいいと言いたいところだけど、今日はちょっと心配だな」