旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 途中、ふたりとも「え? どういうこと?」と聞き返すこともあった。自分でもややこしい話だと思うけどしょうがない。

 長い話を終えると、食べながら聞いていたふたりのお皿は空っぽになっていた。

「私、萌奈ちゃんが事故の後に『実は副社長と結婚してた』って聞いて、ビックリしたんだよ。別の彼氏がいたはずなのに、おかしいなって」

「知ってたんですか」

「うん。彼氏の話、たまに聞いてたから」

 そうだった。私は原田さんに「婚約者がいて、もうすぐ結婚する」と話していたんだ。

「私もそう聞いてたから、副社長と結婚したって聞いて、なんて節操のない女なんだと思った」

「おう……」

 まあ、そう思いますよね。

「あ、だから私のこと余計に嫌いになったんですね!?」

「それは前から。私はあなたみたいに他人によりかかって生きている人が嫌いなの」

 バッサリと言い放つ佐原さんの言葉が、私の胸をざっくりと斬りつける。

 間違いない。私は両親や景虎、上田さんにも甘えてばかりだった。自分で自分の生活を成り立たせていたことがない。

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