旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~

 たとえば、うちの病院が実は経営難で、医療機器メーカーの景虎を口説き落として、安く機器を売ってもらう契約をしたとか……。

 私の予想を話すと、佐原さんが首を横に振った。

「それじゃ、副社長にメリットがない」

 素直すぎる発言に、私はまたグッサリと心を突き刺された。っていうか、抉られた。

 そりゃあ、父が病院経営なだけで、私自身は自立もできない、情けない社会人ですよ。医者になれなくて秘書になりましたよ。

 頭も顔も普通、性格が特別いいわけでもない。そりゃあ景虎にはなんのメリットもないわけだ。

「ああめんどくさ。両親と本人に話させるのが一番早いんじゃない?」

 佐原さんはノンアルコールビールを注文し、勢いよく喉に流し込む。

「ですよねえ」

「それは萌奈ちゃんもわかってるのよね。ただ、遅れて反抗期が来たっていうか……嘘を吐かれてビックリしたのよね。ちょっと怒っちゃったから、帰りにくくなったんでしょ」

 まるで小学校高学年の女子に言い聞かせるように、原田さんがフォローしてくれる。全然フォローになってないけど。

< 181 / 245 >

この作品をシェア

pagetop