旦那様は懐妊初夜をご所望です~ワケあり夫婦なので子作りするとは聞いていません~
「……そうだ。まだ案内していない部屋がある」
いきなり話題を変え、彼は私の手を引いてリビングを出た。
彼は廊下を歩き、数あるドアの中の一つを開ける。
中を見た私は、思わず歓声を上げた。
「わあ……っ」
部屋の壁面いっぱいに括りつけられた棚に、本がずらりと並んでいる。
まるで昔見たアニメ映画の背景。上の方の本を取るための梯子がスライドするようになていた。
これに足をかけて、片手で本を持ってすいーっと移動するのよね。現実でやったら危ないし、梯子を体重で折らないか心配になるけど。
「私、本が大好きなの。まさに憧れの部屋!」
棚に駆け寄り、並んだ本の背表紙を指でなぞる。
ジャンルごとで作家順に分けられているようだ。物語、エッセイ、実用書、画集など様々な本がぎっしり詰まっている。
「知っているよ。俺たちの共通点だ」
「景虎も、本が好きなの?」
「ああ」
彼は噛みしめるようにゆっくりと頷いた。
「これは、君がすすめてくれた本」
引き出された一冊の本を渡される。