嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
*
朝の明るみがまだ滲むように広がっている最中、すやすやと眠っている花帆を起こさないようにベッドから降りた。
支度を整えてから向かった先は母屋のリビングだ。そこには既に両親の姿があり、何時に起きたのか分からないけれどスッキリした顔をしている。
「おはよう。朝早くに悪いな」
「別にかまわないけど、朝早くてもおまえは男前だなぁ」
父親が感心したように言うものだから、「なんだそれ」と笑った。
花帆や杏太には聞かせられない内容だったのでこんなに早くなった。
「空きっ腹にあまりよくないけど」
母親が三人分のコーヒーをテーブルに置く。
鳥のさえずりに耳を傾けながら、香りのいい温かいコーヒーを腹の底に流していく。
さっきまで緊張していなかったのに、いざ面と向かって話をしようとすると頬の辺りが強張った。
「杏太や花帆ちゃんに聞かせられないとなると“あの”話かな」
父親が目元をやわらかくして微笑む。気遣われているのが伝わってきた。
「いい話じゃないし、掘り起こすのはやめようと思っていたんだけど」
「花帆ちゃんと結婚するから?」
なにから話そうかと口ごもる俺を見て、母親が後を引き継いで言葉を付け足した。
「仁は真面目だからね。きちんとしておきたいのよね」
静かに頷く。
「仁はどこまで覚えている?」
「忘れた記憶はないはずだけど」
一度たりとも考えない日はなかったから。
朝の明るみがまだ滲むように広がっている最中、すやすやと眠っている花帆を起こさないようにベッドから降りた。
支度を整えてから向かった先は母屋のリビングだ。そこには既に両親の姿があり、何時に起きたのか分からないけれどスッキリした顔をしている。
「おはよう。朝早くに悪いな」
「別にかまわないけど、朝早くてもおまえは男前だなぁ」
父親が感心したように言うものだから、「なんだそれ」と笑った。
花帆や杏太には聞かせられない内容だったのでこんなに早くなった。
「空きっ腹にあまりよくないけど」
母親が三人分のコーヒーをテーブルに置く。
鳥のさえずりに耳を傾けながら、香りのいい温かいコーヒーを腹の底に流していく。
さっきまで緊張していなかったのに、いざ面と向かって話をしようとすると頬の辺りが強張った。
「杏太や花帆ちゃんに聞かせられないとなると“あの”話かな」
父親が目元をやわらかくして微笑む。気遣われているのが伝わってきた。
「いい話じゃないし、掘り起こすのはやめようと思っていたんだけど」
「花帆ちゃんと結婚するから?」
なにから話そうかと口ごもる俺を見て、母親が後を引き継いで言葉を付け足した。
「仁は真面目だからね。きちんとしておきたいのよね」
静かに頷く。
「仁はどこまで覚えている?」
「忘れた記憶はないはずだけど」
一度たりとも考えない日はなかったから。