嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 仁くんたちも、まさか私がこんなに朝早く起きるなんて想像していなかったんだろうなぁ。

 いつも休みの日は泥のように眠るもんね。

 今日は仁くんと出掛ける約束をしていたし、楽しみでしかたない気持ちが睡眠の邪魔をしたのかもしれない。

 なにも知らずに寝ていた方が幸せだったのかな……。

 でも遅かれ早かれ婚約解消を突き付けられるのなら、早い方がよかったのだと思いたい。

 涙を乱雑に拭ったせいで頬がヒリヒリと痛む。車両内の効きすぎている空調で冷えた二の腕をさすった。

 キャップ帽を被り、リュックを背負った男の子がキラキラとした瞳を窓外に投げている。傍らには穏やかな表情をたたえた父親と母親の姿。

 家族でどこかにお出掛けかな。

 私も仁くんと楽しい一日を過ごしたかった。
 
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