嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 仁くんは喋りながら器用にキスを繰り返す。

「こんなに色っぽい身体を差しだしておいて、ロリコンはないだろう」

「今じゃなくて、中学生の話を……」

「花帆は発育がよかったよ」

 よくご存じで。

 中身は幼かったけれど、たしかに胸が大きくなるのは早い方だった。

「って、なに言っているんだ。さっきから発言が気持ち悪いよな」

 いちいち真面目である。

「気持ち悪くないよ。むしろ仁くんも普通の男の人なんだなって安心した」

「俺って花帆にどう思われているんだ?」

 仁くんは顔を遠ざけて、私の瞳を覗き込む。

「物静かで、真面目で、大人な感じ?」

「そういう俺が好き?」

「どんな仁くんでも好き」

 蚊の鳴くような声になった。

「ありがとう」とはにかんだ顔が、可愛くもカッコよくも色っぽくもあって。

 破壊力がありすぎる。心臓を鷲掴みにされて思わず「うっ」と呻いた。

「今さらだけど、ちゃんと返事を聞いていなかったな」

「返事?」

「婚約関係を継続するか」

 そういえばそういう流れだったかも。

 仁くんはさっきまでの甘ったるい雰囲気を引っ込めて、真剣な眼差しを送ってきた。

 ごくりと生唾を飲み込む。

「私が中学生の頃からって言ってたけど、私は幼稚園の頃から好きなの。断る理由がないよ」

 長年好きだったと告白するのってけっこう勇気がいる。

 相手の気持ちを知っているうえでの告白なのに、心臓がバクバクと激しく鳴っていて壊れそう。
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