嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「いいね、その反応」

 仁くんは片方の口角だけを上げて二ヤッと笑う。

 私が出会ってきた男性のなかで、仁くんは群を抜いて紳士だと思っていただけに、これまでの顔とのギャップが強くて。

 でもそれがまたいいっていうか。

「これ以上好きにさせないで~」

 泣きそうな声で訴えれば、「どこまで可愛いんだよ」と色気たっぷりの声で囁き、飽きずに翻
弄してくる。

「このまましたいのはやまやまなんだけど、今はやめておく」

 今は? いつならするの?

 どちらにしても、近いうちに訪れる行為に覚悟を決めておかなければいけなさそうだ。

「ひとまず家に戻ろう。みんな心配しているから」

「そうだよね……みんなに迷惑かけちゃった」

 杏ちゃんはいいとして、社長や弥生さんと顔を合わせるの気まずいな。

「そんなに深刻そうな顔するなよ。みんな気にしてないから。むしろ婚約者に逃げられた俺の方が格好悪い」

 弱った笑みを浮かべた仁くんにつられて笑うと、落ち込んだ気持ちもふわっと軽くなる。
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