嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 それから弥生さんお手製のエッグベネディクトなるものを美味しくいただき、食後の紅茶まで入れてもらった。

 コーヒーや紅茶の香りが入り混じって漂うなか、仁くんが話を静かに切り出した。

「結婚式にあの人を呼ぶかどうか、改めて意見を聞きたい」

「あの人って、沙倉さん?」

 私の疑問を杏ちゃんが解決してくれる。

「そうだ」

「仁は呼びたいの?」

 杏ちゃんの問いかけには遠慮がない。けれど、それがふたりの間には壁がないというのを証明しているようで内心安堵した。

 ふたりはずっと兄弟として育ってきたんだもの。私が心配する必要なんてないんだよね。

「……この家に来てから一度も会っていない。だから囚われていた部分もあるような気がするんだ。花帆と新しい人生を歩んでいくためにも、きちんと清算するべきなんじゃないかと考えている」

「相変わらずクソ真面目だな」

「ちょっと杏ちゃん。そこは誠実って言ってよ」

 ムッとして口を尖らすと、杏ちゃんは「はいはいはいはい」と軽く流した。

「はいが多い」

「ありがとう、花帆」

 とろけそうな王子様スマイルを至近距離で浴びせられた瞬間、杏ちゃんの言動なんてどうでもよくなった。

 杏ちゃんはおどけた顔をしている。憎めない。
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