嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「ずっと会っていないんだもんね」

「おっとりした人とは記憶しているけど」

「そうだ! ちょうど母の日のお菓子があるから、あれをアレンジしてみたらいいんじゃないかな」

「母の日か」

 赤色のカーネーションは『ありがとう』の感謝の気持ちの象徴。それにちなんで、朝霧菓匠から販売する母の日限定上生菓子のひとつに、カーネーションをかたどった薄紅色の練り切りにこし餡を詰めたものがある。

 普段は面と向かって言えない言葉を和菓子に託してみませんか、というコンセプトで、母の日の定番お菓子となっている。

 もうひとつは、透き通る水面に様々な思い出を浮かべて、の意味を持たせた錦玉羹(きんぎょくかん)

 錦玉羹とは、寒天を煮溶かし砂糖や水飴を加えて煮詰め、型に流し入れて固めたもの。

『おもいで』という商品名の錦玉羹のなかにはびわ、さくらんぼ、鹿の子豆などが詰まっていて、甘いものが得意ではない人にも食べてもらいやすいようすっきりした甘さになっている。

「母さんにも渡したいし、似たり寄ったりになるのは気が引ける」

 そうなのだ。仁くんは毎年、母の日、父の日、敬老の日を忘れることなく贈り物をしている。

 そういう律儀で、感謝の気持ちを忘れない一面が素敵だ。

 ちなみにこれについて教えてくれた杏ちゃんは、ちょこちょこ忘れるらしい。それでも渡す習慣があるのだから、やはり育ちがいいなと思わせる。
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