嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「仁と花帆が並ぶと、ふたりでひとつみたいな組み合わせだな」

 私も薄々は気づいていたけれど、改めて杏ちゃんに指摘されると顔がぼっと熱くなる。

「あえて?」

「何パターンかで迷っていて、仁くんに相談したらこれがいいって言うから」

「ほーん」

 なによその反応は。

 自分から聞いておいて、どうでもいいような顔をしている。

「花帆は俺の隣な」

 杏ちゃんの脇腹を小突いたところで仁くんに声を掛けられてビクッとした。

「言わなくてもそうだろ」

 杏ちゃんが白けた目を向ける。

「俺は父さんたちと三人席に座るから、おふたりさんはどうぞ勝手にいちゃついてくださいな」

 茶化す杏ちゃんに「そうさせてもらう」と澄まし顔で返した仁くんは、空いている手を私の指に絡ませてきた。

 外でもどこでも、家族の前でも、仁くんは愛情を隠さない。

 全身に熱が広がっていくのを感じながら顔を俯かせた。

 喜びと羞恥心が半分ずつくらいだ。

「よかったな、花帆。愛されてるじゃん」

 ポンッと私の肩を叩いた杏ちゃんの言葉に、「そうだ、愛されているのだから恥ずかしいなんて贅沢を言っていられない」と思い直したところで、前に並んでいた社長がチラッとこちらを振り向いた。

 口元が分かりやすくニヤついている。前言撤回だ。
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