嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する

 私たちを乗せた新幹線は予定時刻に長野駅に到着し、そこからはタクシーを利用して別荘地に向かった。

 森林のなかにポツンと建つ一軒家は、白色と茶色のログハウスだった。

「なんか、朝霧家に似ているね」

 私の呟きを仁くんが拾って答える。

「ばあさんがこういうの好きだからな」

 聞けば、ここの家も朝霧家もおばあさまの好みで建てられたそうだ。

 仁くんのアドバイス通り羽織ものを持ってきてよかった。風が冷たく空気がひんやりとしている。

「自然のいい匂いがする」

「そうだな。空気も澄んでいるし」

 鳥のさえずりが耳に心地いい。

 鬱病は完治しても再発率が高いと弥生さんから教えてもらった。心を休ませるという意味で、
この場所はぴったりなんじゃないのかな。

 駐車場から家までわりと距離がある。きっと仁くんの祖父母は足腰が丈夫なのだろう。

 いったいどこまでが朝霧家の敷地なのかと考えたら、頭がくらくらした。

 たまに忘れちゃうけど、朝霧のおうちはとっても裕福なんだよね。
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