嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
順番に靴を脱いでいくなかで、最後尾に立つ私の後ろにすっと仁くんが回って扉を閉めた。それから靴を脱ぐ私にさりげなく肩を貸す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
すぐそばで私たちのやり取りを眺めていたおばあさまの眼差しが優しく、照れ臭くなった。
玄関から入ってすぐ右手に黒色の暖炉が目に付いた。外に薪棚があったので、冬場は稼働するのだろう。
左手に二階へと続く階段があり、カルフォルニアスタイルを彷彿させるデザインのソファとテーブルが並んでいる。正面にはキッチンがあり、カウンター越しにクシャッとした笑顔とぶつかった。仁くんのおじいさまだ。
目鼻立ちがくっきりしていて、いい感じに日焼けをしているから若々しく見える。髪はおばあさまと同じくふさふさでオールバック。
カッコいい。この一言に尽きる。
「花帆さんだね。せっかくのお休みにこんなところまで来てもらって悪かったね」
優しく語りかけてくれるおじいさまの手元には白い生地がまるく広がっていて、その横にはいろいろな食材が置かれている。
デニム生地のエプロンを着ているところを見ると、おじいさまが調理をしているようだ。