嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「久しぶり」

「うん。来てくれてありがとう」

 仁くんは小さく頷く。そんな姿すら愛おしそうにしている沙倉さんが私を視界にとらえた。

 慌てて挨拶をする。

「はっ、初めまして。香月花帆と申します」

「花帆さん初めまして。弥生の姉、沙倉です」

 ふわりと笑った目元が仁くんにそっくりだ。

「ちょっとここに座って」

 仁くんは落ち着いた物腰で、カウンター席の椅子を両手で引き出した。沙倉さんは戸惑いの色を浮かべながらも腰を下ろす。

「花帆は隣に」

「う、うん」

 言われた通りに沙倉さんの隣に座る。

 社長と弥生さん、杏ちゃんはソファでこちらの様子を見守っている。おばあさまは私たちが腰掛けたタイミングでキッチンへ入り、おじいさまと一緒に料理を再開した。

 仁くんが風呂敷をカウンターに置いて解く。
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