嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 どれだけ『仁くん、仁くん』と後を追いかけてきても、鬱陶しいどころか愛おしく感じていた。

 あのままの関係でいられたら、今頃どうなっていたんだろうな。

 花帆と暮らし始めてから幾度となく過去を振り返っては後悔の念に駆られている。

 中学生になり、真新しい制服をまとうようになってから花帆は急速に大人びていった。美冬さんに似て色が白く、もちもちとした肌は大福のようだと思っていたのに。

 身体つきが女性へと変化していくなかで、ある日、まだ無防備な花帆の下着がうっすらと透けているのを目にした。

 そういう感覚が初めてだったわけではない。だけど、ここまで激しく男の部分を揺さぶられたのは初めてで。

 明らかに欲情した自分にドン引きして、同時に花帆を女として見てしまった自分に心底幻滅した。

 一度意識してしまってからは感情のコントロールがうまくできず、そんな自分が嫌で、可憐な花帆を穢してしまう気がして距離を置くようになった。

 花帆は急に冷たい態度を取るようになった俺から次第に離れていき、一年振りに顔を合わせて家族のみんなと食事をしたときには、俺に対してすでに他人行儀になっていた。それ以来俺たちはずっと表面上の付き合いを続けてきた。
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