嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 十九時を迎えたリビングには両親と杏太の姿があった。花帆はすぐにキッチンに向かい配膳の手伝いに取りかかる。

「この時間に杏太がいるの珍しいな」

 芸術大学に通う杏太は夜遅くに帰ってくるのがほとんどだ。課題も多く制作に時間を取られるし、友人たちとの付き合いもあるのだろう。

「花帆が早く帰ってこいっていうからさ」

 ソファに寝転びながら「ふあぁ」と欠伸をして眠たそうに目をこする杏太は、中身も外身も俺とは真逆のタイプ。

 パーマをかけ、金色に染めた髪は光を透過してキラキラしている。服装も最近の若者らしくお洒落で、人懐っこく天真爛漫な杏太の雰囲気によく合っている。

「買ったはいいけど食べきれないから、一緒に食べようってさ。ほんと和菓子バカだよな」

 どうして俺じゃなく杏太と食べるんだよ。

 まあ、俺が作ったやつだし、誘いづらいか……。

 本人に食べようと言うのは気が引けるのだろうと自分に言い聞かせて、五人掛け長方形のダイニングテーブルに足を向けた。料理はもうほとんど並んでいて手伝うまでもなさそうだ。
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