嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「このお皿は仁くんが選んだの?」

 離れの食器棚にはいろいろな形の器があり、全部ふたつずつ揃っている。

「俺が揃えたものがほとんどかな」

「そうなんだ。センスがいいね」

 うちの実家で使われていた食器は深緑や茶色などの渋い色合いばかりで、絵柄も草とか(つる)とか抽象的なものばかりだった。

 弥生さんが好んで使う食器もそうだけれど、仁くんが選んだというここにある器もお洒落で今風だ。

「一緒に買いに行った方がよかった?」

 ううん、と首を横に振る。

「こんなにいっぱいあるのに、もういらないでしょ?」

「これは花帆が使うかもしれないと思って、引っ越し前に用意しておいた」

 予想外な発言に「えっ」と目を丸くする。

「そうだったんだ。ありがとう」

 言葉の意味を別の角度から解釈すれば、それは私を少なからず歓迎しているということ。

 わざわざ私のために……うれしいな。

 初めて仁くんの気持ちに触れられたようで、心がじわりと温かくなった。
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