嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「また怖い顔してる」

 不意に杏ちゃんに指摘されてパスタが喉にグッと詰まった。

「仁となにかあった?」

「実はね……」

 この前仁くんに言われたことを包み隠さず話した。

「深読みしすぎじゃない? どうして仁が花帆を好きって結論に至らないわけ?」

「好きなわけないじゃん」

「どうしてそう思うの?」

「じゃあ逆に聞くけど、仁くんが私を好きになる要素がどこにあるっていうのよ」

 杏ちゃんは虚空を仰いでしばしの間無言になった。

「ほら、ないでしょ」

「いやいや、そうでもない」

 飄々とした態度で言うけれど、フォローのひとつ出てこないところからして説得力がない。

「花帆は大事にされてるよ」

「それは分かるよ。でも妹的な感じでしょ」

「本気で妹と思っていたら結婚なんてしないって」

「そ、そうかな」

 仁くんに最も近い関係の杏ちゃんに言われると、まんざらでもないというか。

 ちょっとだけ自信を取り戻せた気がする。
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