嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 話がとんとん拍子に進みすぎて欲張りになっていた。これから先、死ぬまで仁くんの一番近くにいられる権利を与えられたのになにをそんなに欲張っているのか。

 まずはこの幸運に感謝して、子供云々についてはおいおい考えていこう。

「結局いつも通り私が話を聞いてもらっちゃったね」

「そうでもないよ。花帆に話せて少し気持ちが落ち着いたから」

「そう? あんまり無理しないでね」

 仁くんとタイプは違うけれど、杏ちゃんもかなりのイケメンだ。望めばすぐに違う女の子と付き合えるだろうし、彼女の後釜を狙っている子だって絶対にいるはず。

 それでも杏ちゃんは今の彼女がいいんだろうなぁ。

 恋愛って難しい。

 仁くんへの長年の片想いという経験しかない私が語るのもなんだけど。

 帰ったら仁くんとお喋りする時間はあるのかなぁと考えながら家路についたけれど、その日は待てど暮らせど仁くんは帰ってこなかった。

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