【完】絶対に内緒のふたり暮らし♡1/2
「これが海だったらいいのにね」
「……おい、今冬だぞ。寒いだけじゃん。こたつの方がいい」
「そ、そうかもね……あははっ」
無理に口角を上げて笑みを作ると、男子は私の頬っぺたをつまんでこう言った。
「下手くそ」
「え……?」
「無理に笑おうとするから下手くそなんだよ」
「……、」
「笑いたい時だけ笑えばいいだろ」
自分だってムッとした表情をしてるくせに。
だけど、強張った力がふわりと抜けて、心は少し軽くなったんだ。
私はその子の名前も学年も知らなかった。
でも、きっと私と同じ5年生かもしれない。
翠の転校と同じ時期に4組にやってきた転校生がいたから、ひょっとするとその子かな。
彼のことをもっと知りたいと思った……。
その願いが叶うことはなかったけれど。