きっと、月が綺麗な夜に。
やわっこく小さな体が、青白い肌が、漆黒の髪が、闇色に染まったビー玉が、内側が濃いグラデーションのラズベリー色のリップを塗った唇が、その全てが、僕を闇から押し返す。何度も、何度も。

でも、押し返された先の光に、君はいないじゃないか。押し返す、ということは、やはり君は闇に墜ちたままじゃなきゃいけない。

僕じゃ、君に光の泡を落とすには役不足なんじゃないかって思ってしまう。

僕も美矢も、互いに闇に留まってお互いを光へ押し返そうとしている。


……それじゃ、そんなんじゃダメだよ。だって、美矢は僕にとって闇から押し返してくれる人じゃなく、光そのものになっているんだから。

どうして美矢は闇の中に留まろうとするのだろう。美矢は僕からしたら、淡い光の泡をずっと飛ばしてくれるようなそんな存在なのに。

過去にとんでもなく、冷たく暗いところにいたのは知っている。けど、もうそこにいなくていいのは、君も同じだろう。


昨日、美矢を闇から押し返すという決意をしたのは、早々に撤回しよう。

君のいるそこを、光で埋めつくそう。どうしたらいいのかは分からないけど。

ああ、やはりちっぽけな僕はあまりに役不足だ。
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