きっと、月が綺麗な夜に。
ノックは短く3回、静かに叩いてドアを開けると、重たい瞼のふてぶてしい顔のじいさんが、日誌から僕たち3人へと目線を上げた。


「おはようございます、猫塚さん」

「コジローか、珍しく早いな。そっちのデカイのはいつも早いが」


ぶっきらぼうで早口に捲し立てた猫塚さんは、多分あまり得意じゃないだろう武明先生をちらりと見やると、再び僕へ視線を戻す。

僕は猫塚さん的にそれなりに気に入っている方の人間らしい。
校長先生曰く、関西にいる高校生のお孫さんと顔や背格好が似ているんだとかで。


「何か用があって来たんだろう?用がないなら出ていっておくれ」


基本的にぶっきらぼうで人といるのが好きじゃない猫塚さんのせっかちな一言に、思わずいつも通りのテンポで話を進めてしまって申し訳ないと思い、背筋を少しだけしゃき、と伸ばした。


「猫塚さんに紹介したい子と、その子についてのお願いごとがあって」


そう言ったタイミングで、180センチ手前の僕と190センチ超えの武明先生、という長身の僕たちにすっかり隠れてしまっていた美矢が僕たちの体を壁をこじ開けるようにしてかき分けてひょっこりと顔を出した。
この感じ、ちょっとだけ、猫塚さんのことを警戒しているのだろうか。

狭いところから顔を出し警戒しつつ人を観察する美矢の猫的行動が猫塚さんの心に刺されば良いのだけれど。
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