きっと、月が綺麗な夜に。
猫塚さんは重たそうな瞼の、ペルシャ猫を思わせる全体的に丸くてぺたんこの顔でじっと美矢を見ている。

黒猫対ペルシャ猫の品定め合いを見ているようで、本日2度目の笑いを堪えるのに口元に手を添えるポーズを取る。

ちらりと武明先生を見やると武明先生も同じ気持ちのようで、ぱあ、と鼻の下を伸ばして口を開き声を出して笑いそうになるのを堪えているような顔をしていた。


「ねこ、づか、さん。あたしに仕事、手伝わせて」


しばらくお互い静かに睨めっこした猫の擬人化同士だったが、先に口を開いたのは美矢の方。
カテゴリーが近しい人間に対した経験があまりないのだろうか、緊張気味に声を発した美矢の、かき分けて僕に触れた手がぎゅ、とTシャツの裾を握っていた。


その様子を更にじ、と見ていた猫塚さんだったが、表情筋を動かさずに胸ポケットを探り、そっとスティック状の袋を取り出す。
それは、猫たちが夢中になって食べる有名なおやつだ。しかし、何故、今?


「お前は何味が好きかい?」


謎の質問を投げかけた猫塚さんに、更に笑いが込み上げて来て慌てて我慢する為に喉がぶるりと震える。

またちらりと隣を見やると、武明先生も必死に堪えた顔を明後日の方向に向けていた。
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