きっと、月が綺麗な夜に。
仕事が全て片付いたのは18時半を過ぎた頃。美矢は先に帰ると17時頃に連絡があったから、僕はまっすぐ自転車置き場へと向かった。

まだまだ暑いけれど、季節は夏から秋へ傾き始めている。この時間だと、空もだいぶ夜へと準備が始まったような色をしている。


そんな時間帯、自転車置き場に先客が。


「……ケンゴ?こんな遅い時間まで何やってるんだ?早く帰らないと」

「待ってたんだよこじろうを」


その先客は、島唯一の中学生ケンゴだった。
生意気に、僕を下の名前で呼び捨てにするケンゴ。漁師の若い連中の影響だ。いくら注意しても思春期が終わるまで治らないだろうから、注意しつつも諦めてはいるのだが。

僕を待っていたというケンゴの右手には、県内外近辺の高校の情報が簡易的に載っている冊子がある。まだ、受験先が決まっていないのだろうか。


「どうしたの?進路相談」

「うん。今日はかーちゃん遅いからこじろうんちでメシ食いたいって言ってある。りょーさんにも伝わってると思う」

「それなら職員室に来て待っててくれたら良かったのに。それか、うちで先に待ってるとか。暑かったでしょ?」


そうは言っても思春期真っ盛りの中学生男子だ。職員室は居心地が悪いだろう。

うーん、と歯切れの悪い声を出したケンゴは妙にモジモジして下を向く。
大人になるとこの年頃の考えは難しい。経験したはずなのに。
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