きっと、月が綺麗な夜に。
「だって、こじろうんち、いるんだろ……若い、女の子」


そのモジモジして下を向いたままのケンゴがもごもごと僕に言った。


なるほど、そういうことだったんだ。
ケンゴの知る限りの若い女といったら、島に移住してきた漁師連中の彼女や奥さん、武明先生の奥さん、小学生や幼児のお母さんくらいだ。

美矢との年齢差は3、4つくらいなもので、思春期も相まって気まずさが暑い外より勝ったのだろう。

そういえば美矢がやって来た期間、ケンゴは島の外の親戚の家に泊まりがけで遊びに行っていたらしく、子供たちとギターを囲む美矢とも会ったこともない。


「まあ、うん。今日から猫塚さんと一緒に働き始めたよ」

「え、ねこじぃと?凄い女!会いたいような、ちょっと会いたくないような」


人嫌いな猫塚さんが認めたとなると偏屈な奴だと思ったのかもしれない。

渋い顔をしたケンゴの顔を見て緩く笑って、ケンゴのリュックを預かり自転車のカゴに入れると、まだ幼さの残る肩が重荷が無くなってストンとなで肩になった。
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