きっと、月が綺麗な夜に。
多分ケンゴの顔と名前をインプットしているであろう美矢は、そのビー玉みたいな瞳はほとんど動かすことなく「ばんわー」と首だけ動かして挨拶を返す。

その美矢の初めての一声に「うぇあっ」とよく分からない声を発してまたぴょいん、と、飛ぶっていうよりかはバネみたいにバウンドしたケンゴの一喜一憂が、僕やりょーちゃん大人組は微笑ましくて堪らない。

僕たちだって勿論子供だった時代はあるけど、もう戻れないあの時が羨ましくて、懐かしくて、可愛らしい。


「さ、とりあえずご飯にしよう!ほら、手洗いに行った行った!」


一生見ていられそうだけど、放っておくのは可哀想になったか、りょーちゃんは僕とケンゴの背中をバシッと叩いて手洗いを促した。

美矢はというと、さほど緊張しているでもなく、また、僕達みたいに少年の可愛らしさにほっこりしているでもなく、平常運転で配膳へと戻ってゆく。

平常運転、ということは、特段ケンゴを警戒しているわけでもなく、緊張もないということだろう。
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