一匹狼くん、 拾いました。弐
「……康弘さん、どうして鈴音って、母さんと同じ香水使ってるんですか」
康弘さんに近づいて尋ねる。
「鈴音の誕生日に、妻が香水をあげていたからだと思う」
なんだそれ。
「俺、母さんからの誕プレなんてもう一年以上もらってないですよ。血の繋がってる俺がこの仕打ちなのに、康弘さんの連れ子で、母さんと血の繋がってない鈴音がなんで!」
涙が流れてしまう。また期待していたことを自覚した途端に、心は悲鳴をあげる。
自分が不安定すぎて嫌になる。でも正気を保つ方法がわからない。
腕に爪を立てる。皮が剥けた。
「仁くん、また怪我するから」
康弘さんに手を掴まれる。
「うるっせぇよ! 同情してるだけで、俺のことを愛してなんかいないくせに!」
抱きしめられてしまう。
「そんなことはない。私は君を本気で愛している」
腕を振り解けないのは、愛に飢えているから。嘘でも愛されたいから。ちゃんと自分を見てくれる親が欲しいから。
それでも本当に嘘だったら、自分を見てくれない親だったら、また傷ついて泣く羽目になるのに。……凄く惨めだな、俺。
「っ。やっぱ俺……鈴音とも康弘さんとも飯食べたくないです。家には明日戻るので、好きに使ってください。鍵渡しておきます」
ポケットから家の鍵が入ったキーケースを取り出して、康弘さんに渡す。
「えっ、仁くん、どこに行くんだい?」
「結賀の家に泊まります。お願いだから追わないでください。そんなことされたら余計、不安定になるので」
そうなるとしか思えなかった。
愛してるよって言われて抱きしめられても信じられない。それなのに追われたらきっと、また疑って傷つけてしまう。
「……わかった。ちゃんとご飯は食べて寝るんだよ」
俺はお辞儀をしてから、結賀の家まで歩く。バイクを取りに行ってから向かった方が早く着くのはわかっていた。でも全然涙が止まらなくて、運転中に事故を起こす気がしたから、そうした。