一匹狼くん、 拾いました。弐
 焼肉屋は混みすぎで、俺達の前に四組待っている奴らがいた。

 待つための椅子は全部埋まっていた。
 俺は外に出て辺りを見回す。ここ外にベンチないんだよな。

 店内に喫煙所がないからか、外には灰皿とゴミ箱が一つずつ置かれていた。

 煙草吸いたくなってきた。母さんと仲が悪くなってからは、イライラしたら吸うようになった。ミカと会ってからは、ミカに煙草の空気すら吸わせないようにしたかったから、全然吸ってないけど。

 何ヶ月かぶりにポケットから煙草の箱とライターを取り出す。

「こら、仁くん」

 鈴音と店内にいた康弘さんがそばに来て、煙草を指差す。

「もう吸うのやめてると思ったんだけどなぁ」

「ちっ。鈴音帰らせてくれません? そしたら煙草吸わないって約束するので」

 箱を開けて中から一つ取り出す。火をつけていると、ライターを取られた。

「火傷しますよ?」

 火を消してから、康弘さんはライターをゴミ箱に向かって投げる。

「あっ」

 ちゃんと入ったし。クソ。

「鈴音は自分の考えがあって君のそばに来たんだよ。……お母さんに君が何されていたか知って、ちゃんと君と向き合いたいって」

 思わず、店内にいる鈴音を見る。

 コンパクトミラーを見て、髪を整えている。

「あんなことをしている奴が、俺と向き合いたい? 友達って言ってましたけど、どうせ泊まるの男の家なんですよね?」

「はぁ……あの子が泊まるの君の高校にいる、一年生の女友達の家だよ。髪を整えているのは、ネットで知り合って会うのが初対面だから。だから、もう少し話ちゃんと聞いてあげて」

 一年の女友達……? いつの間に作っていたんだ。

「はぁ……中入って話してきます」

 店内に入って、鈴音に手を振る。

「えっ! おにい、どうしたの?」

「俺の高校の一年と知り合ったんだろ」

 ちらっと見てから、近づいてくる鈴音に言葉を返す。

「うん! 佐伯巡(さえきめぐる)ちゃん! お兄知ってるでしょ?」

「テスト学年一位の奴か。模試でも上位だった」

 模試って早くても高校二年生から受けている奴が多いのに、一年でしかも東京の試験受けた奴らの中で五位だったから、よく覚えてる。

「お兄のこと尊敬してたよ。東京で一位で、期末とかのテストも一位だから」

 嬉しくないな。

「あぁ、そう。そいつに俺のこと聞いても、大した収穫ないと思うけどな」

 鈴音は肩を落とす。

「やっぱりそうだよね……でもおにい、私が何か聞いてもちゃんと教えてくれないこと多いから、人に聞いた方がいいかなぁって」

「はぁ……鈴音、伊織の連絡先教えるから、伊織と話して。泊めるように頼んでおくから。ただし、泊まる側なんだから朝昼晩は自分で作って、なんなら伊織の分も作ること。わかったか?」

 スマホを出してLINEを開く。

 伊織の連絡先を教えるのはすげぇ嫌だけど、こいつにこれ以上振り回されたくない。だから妥協案だ。

「うん! ありがと、おにい!」

 抱きついてきた。気持ち悪い。

「ひっつくな。お前の匂い苦手なんだよ。母さんと同じだから」

 引き剥がしてまた外へ行く。

 くそ。ジャンパーから鈴音の匂いがする。

< 229 / 240 >

この作品をシェア

pagetop