一匹狼くん、 拾いました。弐
 四階の屋上で、仁は煙草を吸っていた。

 仁はフェンスに手を伸ばす。

 まさか。

 嫌な想像が頭をよぎる。

「仁、やめてくれ」

「顔青。何想像したんだよ」

 俺と結賀を見て仁は笑う。

「だって」

「中一の時は、あんな扱いされるたびに自殺したくなってた。でももう、そんな弱くねぇよ」

 いやでも慣れたのか。

「仁ごめん。母親に会いに行こうなんて、絶対言っちゃダメだった」

 結賀から目を逸らして、仁は呟く。

「どーでもいい。はぁ。なんも変わんねぇなぁ、ほんと」

 一筋の涙が仁の瞳から零れ落ちる。ずっと堪えてたのか。

「燃やせよ、こんな家」

 結賀の言葉を聞いて、心臓がドキッと音を立てる。

「あはは、それいいなぁ。……床に灯油やって、ライターつけて。その後みんなで死ぬか」

 歯を出して、仁は恍惚と笑う。

 は。笑えなすぎる。

「な、何言って」

 声が震えてしまう。

「冗談だ。そんなガキじゃねぇよ」

 煙草の煙を吐いて、仁は吐き捨てる。

「仁、俺達未成年」

 結賀を見て、仁はため息を吐いてしまう。

「別にいいだろ、今は。鈴音は」

「混乱してる。親の裏、本当に知らないんだな」

 泣いて、どこかに行ってしまった。

「可愛い娘にあんな姿見せないだろ」

 仁は可愛い息子じゃねぇのかよ。

「頭おかしい」

 思わずそう言ってしまう。

「殺してやりたい」

 結賀は小さな声で呟く。

「やめとけ。何しても変わんねぇ」

 仁が首を振ってしまう。

「お前は本当にそれでっ!!」

 仁は結賀の胸ぐらを掴む。

『いいのか』なんて聞けるはずがない。

「期待ならもう散々した。これで最後だ」

 言葉が重すぎる。

「夢は、学費はどうすんだよ」

 ほっそい声で、結賀は言う。

 専門学校か短大に行くかも、まだ決めていないのに。

「奨学金かもなぁ。あいつの望み通り」

 そんなの絶対ダメだ。

「じ、仁の本当のお父さんは?」

「名前しかわかんねぇ」

 なんだそれ。どうしたらいいんだよ。
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