一匹狼くん、 拾いました。弐
俺はずっと暴力を受けていた。岳斗も親に殺されたようなもんだ。でも、あいつは親に無視をされて生きてきた。俺みたいに、暴力じゃなくて。そっちの方が俺は耐えられない気がする。
「なぁ」
キッチンに行って、結賀はしゃがみ込む。
え、誰かいたのか? まさか。
「やめて、離して!」
仁の母親の腕を引っ張り上げて、俺と仁の妹のそばまで連れてきてしまう。
聞いていたのか、ずっと。
「なんで黙ってた。康弘を庇えよ。じゃないとあいつは……」
「北海道で暮らすって? いいじゃない」
「は」
なんつった。
「あの子が帰ってくるのはもう、うんざりなの。これでいなくなるならせいせいするわ」
頼むから、いい加減にしてくれ。
「あいつは、お前のなんなんだよ」
仁の母親の胸ぐらを掴んでしまう。
「いじけたクソガキよ。私に理想の親を押し付けて、叫んでる」
頬を殴った。手が痛い。
「あいつはお前に憧れて、ケーキ屋になりたがってんだよ……っ」
ふざけるな。こんな親に憧れて、仁はパティシエになりたがっているのか? そんなの残酷すぎる。
「だから何? あんな子がケーキなんて作れるのかしらね」
「作れるよ、少なくともお前よりは」
折れていない方の手で、結賀は俺の腕を掴む。そのまま結賀は歩き出す。
「え、結賀? どこに行くんだよ」
仁のいる場所がわかっているのか?
結賀は駅の方に向かって行く。
「んー、心当たりが一個あって。あいつが俺の家で荒れてたの、ミカ覚えてる?」
そういえば。
「壁殴ってたやつ?」
「そ、親のこと考えてると不安定になりがちなんだよな」
じゃあ今もそうなのか。大丈夫なのか?
「俺が華龍に勧誘してた時、あいつはよく家に帰ってなかった。そん時に泊まってたのが……」
ロータリーで手を上げて、結賀はタクシーを呼ぶ。
タクシーに二人で乗り込んだ。
「どこに向かいますか」
「ま、待ってください、私も行きます!」
仁の妹が走ってそばにくる。助手席が開いた。すぐに仁の妹が入る。
「運転手さん、ケーキ屋。えっと……ハニーフローまで」
結賀はスマホを見ながら言う。
「あぁ、かしこまりました」
ドアが閉まり、タクシーが発車する。見つかるといいな、仁。