一匹狼くん、 拾いました。弐
「あ、仁これ。父親の住所」

 結賀は俺にスマホを見せる。康弘さんからのメールだ。

「札幌市東区、北七条……船で行くか」

 紅成さんが呟く。

「え、でも車、駐車場だと」

 何時間いるかわからないから、高くない方が良い。

「茨城で働いてるパティシエに連絡する。車預かってって」

 それならいいのか?

「なんで優しいんですか」

「全員未成年だろ。ホテルどうやって泊まんの」

 そういえば。

「完全に忘れてました」

 結賀は頭を抱える。

「アハハ。大人は必要だろ?」

 紅成さんが声をあげる。

「鈴音、家にいてくれるか」

 鈴音を見て、俺は手を合わせる。

「うん。あたし、パパとママと話したい」

 俺の親父とは、鈴音は会わなくていい。

「あ。代わり見つかった」

 紅成さんが呟く。

「え、早」

 思わず声が出た。

「俺、仕事無遅刻無欠席だから。こういう時得なんだよ」

 すごいな。

「明日の朝出発な。狭くていいなら、寮で寝る?」

「え、でも一部屋じゃ」

 四人はきつい。

「そ。だから三人。俺はここで寝る」

 紅成さんの腕を掴む。

「俺も」

「布団一個だけど」

 それでも良い。

「結賀、寮の五◯ニ号室。これ鍵」

 キーケースを結賀に渡して、紅成さんは俺の頭を撫でる。

 暖かい。

「仁、また明日」

 俊が言う。頷いて、店を出て行く俊と結賀に手を振る。

「おにい、私は家に帰るね」

「あぁ。タクシー代は」

「鈴音、これ使って」

 紅成さんがポケットから財布を出して、一万円を渡してしまう。

 その額は。

「ええ、多い多い!」

「こづかい。仁を心配してくれたから」

 紅成さんがクスクス笑う。

「あ、ありがとうございます」

 一万円を握りしめて、鈴音も店を出る。

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