一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁手伝って」

 紅成さんが物置から布団を取ってくる。

「あ、持ちます」

「いや。テーブルとか端に寄せてくんない? あと俊くんたちって風呂入った?」

 布団を廊下に置いて、紅成さんは尋ねる。

「いや入ってない」

 テーブルや椅子をいくつか、奥へ持って行く。

「じゃあ俺の部屋の風呂使わせてあげて」

 優しすぎないか。

「紅成さん何か、企んでる?」

「ブハ! お前を笑顔にしようとは」

 俺の頬を軽く引っ張って、紅成さんは笑う。痛いって。

 布団を敷いて、紅成さんは寝転がる。

「仁も風呂入ってくる?」

 手招きしてくれた。布団の中に入る。紅成さんがすぐ隣にいる。

「え、明日の朝借りていいですか」

「ん。お前体温高くね?」

 横向きになっている俺の肩に、紅成さんは手を置く。

「わかんない、熱はないです」

「いや違う。あったかいって」

 恥ずかしくなって、紅成さんの胸に顔を押し付ける。

「真面目だなぁ、仁は。明日一緒に、パン作るか」

 したい。

「作る。おやすみなさい」

「おう。良い夢見ろよ」

 背中を撫でてもらえた。子供扱いされているのが、甘えられるのが嬉しくて、涙が出る。

 もう十七歳なのに。

「紅成さん……北海道でも一緒に寝て」

「え、なんて?」

 笑いながら言われた。絶対に聞こえている。

「やっぱなんでもない」

「ハハ、いーよ。四人部屋探そ、ホテル」

 からかわれた。でも嫌じゃない。

「紅成さん、兄弟いた?」

「弟はな。兄っぽい?」

 頷く。

「うん。子供の扱い慣れてるみたいな」

「たまたまだろ。もう寝ろ」

 頷いて目を閉じる。

 紅成さんが本当の親ならいいのに。
< 258 / 265 >

この作品をシェア

pagetop