一匹狼くん、 拾いました。弐
 頭によぎった想いを慌てて振り払う。紅成さんが親だったら、大学や専門の学費を工面してくれると思う。でも、そんなのだめだ。紅成さん、まだ三十五歳だし。俺なんかのために、お金を使うべきじゃない。

 友達たくさんいそうだし。俺と違って、社交性があるから。

「紅成さん」

「んー?」

 目を閉じながら紅成さんは聞いてくれる。

「仕送りが親父のなのも、北海道にいるのも死ぬまでいわないつもりだったんすかね」

「康弘さん? どうだろうな」

 本人にしかわからない質問なのに。

「すみません、紅成さんに聞くことじゃ……」

「仁と向き合ってるようには見えたよ」

 紅成さんの言葉を聞いて、つい下を向いてしまう。
 
『愛する息子の人生のためなんだ』
 康弘さんの言葉が頭をよぎる。

 愛する、ね。

「……嘘つき」

「康弘さんと喧嘩したか」

 俺の涙を拭いながら、紅成さんは首をかしげる。

「もう知らないです、あんな人」

「ん。それでいいよ」

 え。

「義理の親のことなのに、なんで」

「だって、仁を雑に扱う方が悪いだろ」

 あ、そっか。
 母さんに無視されるのは俺が悪いからじゃない。内緒にされるのも、血が繋がってないからじゃない。

 俺のせいかと思っていた。

 泣きそうになって、慌てて目を閉じる。泣くもんか、大切にされなかったからって。そんなの母さんの思うツボだ。

「ちょっと風、当たってきます」

「いいけど、ここベランダねえよ?」

 窓を開けて腕と顔を外に出す。ズボンのポケットから煙草の箱を取り出して、一本だけ火をつける。

 紅成さんが走ってそばに来て、煙草を皿の入った水に入れる。床に皿を置いた。

「はぁ。あっぶね。箱は?」

 俺が煙草の箱を取り出すと、紅成さんは作り笑いをする。

「んー色々、限界だったか。一人暮らしさせてごめんなぁ」

 は。なに、それ。

「叱らねぇの、なにやってんのって」

 抱きしめられた。

「だって、悪いのは環境だろ」

 違うとも、そうだとも言いづらい。堪えていた涙が溢れて、止まらない。

「っ、紅成さんが、親がいい」

 泣き叫んでしまう。一番言ったらいけないことなのに。

「ん、わかった」

 は、それって、どういう。聞けない。恐れていたことが起きてしまいそうで。


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