一匹狼くん、 拾いました。弐
 月日が経つにつれわかっていくのは、いつだって大人の汚さで。残酷さで、こんなよくわからないことじゃない。

 そうだったのに。

「紅成さんは、一緒にいると楽なんだろ」

 結賀は俺の顔を覗き込む。

 俊も近づいてくれる。

「夜、何かあった?」

 俊が心配してくれる。

 言っていいのか。怖いんだ。

『紅成さんが、親がいい』

 あの時の言葉が嘘かもって言われたら、俺は。

「風呂入る」

 掠れた、小さな声が出る。もう何も考えたくない。
 
 風呂から出て、キッチンに行く。コーヒーの苦い香りが鼻腔をくすぐる。紅成さんが、ベランダで飲んでいた。結賀と俊は床に座って話している。

 コーヒーをもう一口飲んでから、紅成さんは俺の隣に来る。

 ダイニングにはテーブルとソファがあって、リビングには紺と緑のクッションが置いてある。

「髪、乾かしてやる」

 え。

「い、いいです」

 慌てて首を振ると、紅成さんは歯を出して笑う。

「俺がしてぇの」

 なんで。

 ソファに誘導されてしまう。ブラシで丁寧に髪をすいてから、ドライヤーをしてくれる。

「さらさらじゃん」

 近っ。声が耳元で響く。

「気のせいじゃ」

「いーや? 俺の千倍良い」

 え。

「ハハ。大袈裟」

つい笑ってしまう。紅成さんもそんな髪、傷んでないじゃん。枝毛見たことないし。

「笑ったな」

 それが目的だった?

「紅成さん」

「んー?」

『俺のこと、裏切りますか。母さんみたいに』

 そう聞いてしまいたい。

「スタンド、行ったんですか」

「おう。ガソリン満タン」

 こんなことが聞きたいわけじゃないのに。



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