一匹狼くん、 拾いました。弐
 チケットを取って、夕方の便の船に乗った。茨城から北海道まで十九時間、明日の昼に北海道に着く。

 海は青くて、月に照らされて光っている。

 結局、紅成さんとパン作りはしなかった。頭の中がぐちゃぐちゃしていたから。
 
「夕食七時前だっけ? 船で食べられるの良いよな」

 弾んだ声を出して、結賀は笑う。

「俺、こんなでかい船乗るの初めて」

 俊も笑っている。船は七階建てで広い。

 客室は三階分あって、車も乗せられるらしい。北海道でも紅成さんに運転をさせるのは申し訳ないから、紅成さんの車はもう、茨城にいた人に預けた。

 じっとしていられない。出港前だからって、うろうろしていたら目立つのに。

「散策するか」

 俺と俊の手を掴んで、結賀は歩き出す。

「ワンワン!!」「ワウワウ!」

 展望デッキのそばにあるドッグランで、犬が走っている。柴犬にシェパードにチワワ、シーズー。平日なのに色々いる。

「わっ」

 チワワが足に擦り寄ってくる。

「すみません、大丈夫ですか」

 飼い主の女性がそばに来る。

「はい。お前、なんで」

 犬に懐かれたのなんて初めてで、戸惑ってしまう。しゃがんで、チワワの頭を撫でる。ふわふわ。暖かい。

「仁の人柄が伝わってるみたいだな」

 紅成さんがチワワの背中を撫でる。

 つい、首をかしげてしまう。

「人柄って」

 急にそんなこと言われても、よくわからない。

「気が強くて、でも本当は誰よりも怖がりで、優しくて……泣き虫。甘えたがり」

 なんだそれ。

「クソガキじゃないすか」

「だからほっとけない」

 俺の頭を撫でて、紅成さんは笑ってしまう。まただ。いつまでこの笑顔に、振り回されていればいいんだろう。


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